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札幌家庭裁判所岩見沢支部 昭和38年(少)349号 決定 1963年10月28日

少年 S(昭二七・一二・二生)

主文

少年を教護院に送致する。

理由

(非行事実)

少年は、昭和三六年八月二八日窃盗事件で警察署より岩見沢児童相談所長に通告され、同年一二月同所長から児童福祉法二七条一項二号の保護処置をうけ、その指導をもうけていたものであるが、依然として素行おさまらず、家庭に落着くことなく実兄G(本日教護院送致)、Wらと共に街をはいかいし、機会ある毎に窃盗の非行を重ね、浪費するなど保護者の正当な監督に服しない性癖があり、その性格と環境に照らして将来刑罰法令に触れる行為をなすおそれがある。

(法令の適用)

少年法三条一項三号イ

(保護処分に付する事由)

少年の家庭は、父が酒乱のため、家庭内は夫婦喧嘩などのいさござが絶えず(母はこのため一時少年ら子供を連れて家出をなしたことがあり、更に弟Tは父が飲酒を始めると家から逃げる準備までする。)、母は特に問題はないが、子供に対しては盲愛的で、その指導能力は欠如しており、父母共稼で少年らを放任状態においたことなどその問題要因は大きく(少年調査票参照)、このような家庭内で育成した少年は知的能力はむしろ優れているものの、父母に対する不信感は強く、性格的にはかなりひねくれており、校内においては、喫煙、粗暴、怠学など問題傾向が強く、加えて小学校入学当時から盗みなどの非行が身につき始め、これらが家庭から逃避する場面として益々強く現われ、人格形成に強く悪影響を及ぼし、反社会性はかなり根強いものとなつている。

従来、児童相談所、学校、警察等の諸機関により在宅のまま少年の補導を試みて来たものの、校内における問題傾向は多少好転のきざしをみせつつも、校外におけるはいかい、盗みなどの問題傾向は強く(本年七、八月中においても兄Gらと共に二〇回前後の盗みを犯している)、父母は、少年に対し、熱意を示しつつあるがその問題要因は解決されず且つ右諸機関に対しては感情的になつていることなどその経過から見て、少年を在宅のまま補導することは極めて困難であることが認められる。

以上のとおり、少年の性格、問題傾向、家庭環境などを考慮すれば少年の健全な育成を図るには、施設に収容の上、生活指導を徹底させて社会性を身につけさせることが最も適当であると認められるから、少年法二四条一項二号により主文のとおり決定する。

(裁判官 天野耕一)

参考一

抗告の申立

少年 G

少年 S

右少年等の御庁昭和三八年少第一二七二、三四九号窃盗被疑事件について該審判は昭和三八年一〇月二八日決定の上右少年等は目下札幌少年鑑別所に入所中であるが法定代理人親権者は右決定に対し不服でありますので再審判願いたく抗告の申立を致します。

申立の実情

一、警察官の調書にあらわれた犯罪事実と少年等本人及調査官の調査の結果とは犯罪行為にしても又被害金品並に数額等についても相当の喰い違いがある。

その一例

昭和三八年八月下旬頃右少年等は路上に放置されてあつた中古自転車一輛を拾得の上其の筋に届出でようとしていたが学校登校時刻切逼の為め届出ができなかつたので申立人たる親権者がその筋に届出をしたのにも係らず警察官の調書には右少年等が窃取したことになつている。

その二例

昭和三八年八月中砂川市所在○○公園地内プール側に放置されてあつた麦稈帽(男子用)及ゴム製浮袋一個を右少年等は拾得したのにも係らず警察官の調書には右少年等が窃取したことに調書に記載されている。

その三例

昭和三八年八月中右少年のうちGが路上に立掛けてあつたオートバイをもてあそんでいたものを警察官は右少年が前記物件を窃取せんとする意思あるものと看做し取調搜査したことは事実の誤認であります。

その四例

その他少年等は空巣窃盗を為したが、その賍物、金額数量等にしても警察官の取調の結果と調査官の調査及右少年等の自白の結果比較総合しても少年等の犯罪行為と事実とは相当の喰い違いがある。

二、以上は極くその一例に過ぎないが事実と誤認相違の点が多々ありますので法定代理人たる親権者から本事件に再審判願いたく抗告致します。

昭和三八年一一月四日

右法定代理人親権者

砂川市○○団地○○番地の○○○号

申立人 滝○貞○

右同所

申立人 滝○は○

札幌高等裁判所御中

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